ゴミ屋敷への道のりは多くの場合、床に置かれたたった一つの物から始まります。それは脱ぎ捨てられた一着の靴下かもしれませんし読み終えた一冊の雑誌かもしれません。「後で片付けよう」。そのほんの些細な先延ばしがやがては足の踏み場もないほどの混沌とした空間を生み出す最初の引き金となるのです。「床に物を直接置く」という行為がなぜそれほどまでに危険な前兆なのでしょうか。その理由はそれが部屋の秩序を破壊する「境界線の崩壊」を意味するからです。本来床は人が歩くためのスペースであり物を置く場所ではありません。テーブルや棚、クローゼットといった本来あるべき収納場所との間には目に見えない「境界線」が存在します。しかし一度床に物を置いてしまうとその境界線はいとも簡単に曖昧になります。「一つ置いても大丈夫ならもう一つ置いてもいいだろう」。このように心理的なハードルが下がり床は新たな「収納スペース」として脳に認識されてしまうのです。これが「床が見えなくなる」第一段階です。そして床に物が置かれ始めると掃除がしにくくなります。掃除機をかけるためにはまず床の物をどかさなければならない。この一手間が掃除そのものを億劫にさせ部屋にはホコリや髪の毛が溜まり始めます。衛生環境の悪化はさらに片付ける気力を削いでいきます。さらに恐ろしいのはこの状態が常態化することです。散らかった床の光景に目が慣れてしまいそれを「異常」だと感じなくなってしまうのです。こうなると物の増加スピードは加速度的に増していきます。床に物を置くという行為はダムに開いたほんの小さな亀裂のようなものです。最初は僅かな水漏れでもそれを放置すればやがては亀裂が広がりダムの決壊、つまりゴミ屋敷化という取り返しのつかない事態を招くのです。だからこそもしあなたが床に物を置くことが習慣化し始めていることに気づいたら。それはあなたの生活が発している極めて重要な警告だと真摯に受け止める必要があります。
ゴミ屋敷化のサイン!床に物を置き始めたら要注意